共通テスト(英語2)

英検などの民間試験は国立大学の入試でどんなふうに使われるの?
今までとはくらべものにならないくらい多くの国立大学が、民間試験の受検を学生に求めてきます。民間試験の結果を提出しないと出願できなかったり、民間試験の結果が共通テストの英語の得点に加点されて合否判定に使われたりすることにもなりそうです。また、民間試験を利用しない国立大学もあって、足並みはそろっていません。

大学はどういうふうに民間試験(認定試験)を活用するの?

グローバル化を合言葉に日本の若者には英語を「読む」「聞く」だけではなく、「話す」「書く」という4つの技能が求められています。ほんとうなら、センター試験を「4技能が測れる英語試験」にできれば良かったはずなのですが、センター試験は全国数十万人が一斉に受けるテスト。とくに「話す力」を測ろうと思うと、面接官の確保がむずかしくなります。そこで、以前から一部の国公立大学や私立大学が自主的に利用していた4技能対応型の民間試験(英検など)を、今度は文科省がその導入を考えました。文科省から国立大学に対して「民間試験の受検を大学の出願資格としてください」とか「民間試験の結果(スコアや級)を共通テストの英語に加点してみてはどうでしょう」と呼びかけたのです。ただ、民間試験の導入については公平性の確保などの問題点も多く、大学の対応もまちまちですが、その利用法は大きく4つに分かれています。

大学入試における英語民間試験の主な利用法

①民間試験を義務付け、大学への出願の条件とする 例:英検準2級に合格していないと出願できない
②民間試験を義務付け、共通テストの英語の得点に加点などして活用する。 例:TOEFLのスコア50点で共通テストの英語の得点を満点とみなす。
③民間試験は義務付けないが、出願条件の一つとして選択できたり、共通テストの点数に加点したりして活用する。 例:英検2級で大学への出願もできるし、英検でなくても高校が生徒の一定の英語力を認める内容を記載した調査書で出願できる。
④民間試験を義務付けないし、利用もしない。 例:一回も民間試験を受けることなく、出願ができ、合否は共通テストと個別試験(2次試験)だけで判定される

共通テストで利用される8種類の民間試験=認定試験

文科省(大学入試センター)が認定し、共通テストで採用されることになった民間試験の8種類は以下の通りです。この8種類を「認定試験」とよびます。

英検CBT

 3級:5,800円
準2級:6,900円
 2級:7,500円
準1級:9,800円

TEAP(ティープ)

15,000円

TEAP CBT(ティープシービーティー)

15,000円

GTEC(ジーテック)

6,700円
(CBT受検の場合9,720円)

IELTS(アイエルツ)

25,380円

TOEFL iBT(トーフルアイビーティー)

US235ドル

TOEIC L&R およびS&W

15,985円

ケンブリッジ英語検定

A2レベルは9,720円

私たちに馴染みのある順番で言うと、英検、TOFEL、TOEICの3つです。iBTとかCBTとかは会場のパソコンで受ける方式のこと。8つのうちいずれも英語の「読む」、「聞く」、「話す」、「書く」の4技能が評価される試験です。いまのところ、TEAP、TEAP CBT、IELTS、ケンブリッジ英語検定などは鹿児島が試験会場になっていません。英検CBTは早い段階で全国テストセンターを設置して47都道府県で受検可能になるようです。英検は9割以上の大学で活用されそうなので以下で詳しく見てみましょう。

英検は共通テストに向けて2タイプの新方式を導入

英検は幅広い世代になじみがある試験ですが、1次試験「書く、読む、聞く」の合格者しか2次試験の「話す」試験に進めない従来型試験では、文科省が示した「1回の試験で4技能のすべてを評価」という要件を満たしていませんでした。そこで英検は共通テストに向けて2つのタイプの試験を用意しています。

1.英検CBT 2018年の8月から実施されており、4技能について試験会場のパソコンを使って1日で受検します。ライティング(書く)はキーボードで入力し、リスニングはヘッドホンで聞き、スピーキングは声を吹き込む録音方式です。
2.英検2020 1day S-CBT このタイプは現在の高校2年生のみを対象としています。Reading / Listening はコンピュータを使用したCBT方式、Writing は紙に文字を書くPBT方式で受験します。Speakingはコンピュータを使用した録音式の試験となります。
従来型の英検 一次試験(Reading / Listening / Writing)の合格者のみが、二次試験(Speaking)を受験します。

新たな2タイプについて、英検の担当者は「問題の内容や出題形式は従来型と同じです。従来型も私立大学の入試などで広く使われており、高校3年で新型を受けるまでの練習にもなります」。と話しています。高校3年生が受けるのは2級、準2級が中心になりそうで、スピーキングは2級の場合、約7分。音読、文章についての質問、イラストに関する質問、自分の意見(2問)の計5問です。

英検のサイトはこちらからhttps://www.eiken.or.jp/eiken2020/

CEFR(セファール)とは語学力の国際指標

共通テストで民間試験を取り入れることを決めた文科省ですが、さすがに8種類もの民間試験があれば、どれを受けるかで不公平が生じるのではと思ってしまいます。私たちは種類の違うなにかを比較したいとき統一したものさしを使うことがあります。たとえば物理の平均点が30点、生物が65点のテストだと、ふつうは生物選択者が有利になってしまいします。そんなとき偏差値というものさしを使います。民間試験の導入にあたり、文科省は英検やTOEFLという違う試験の難易度をくらべるときの共通のものさしに『CEFR(セファール)』という基準を使うことにしました。

CEFRはたくさんの言語があるヨーロッパにおいて人が母国語以外の言語をどれくらい使えるかがわかる指標であり、一番基礎のA1から最も難易度の高いC2まで6つのレベルがあります。A1/A2のレベルは「基礎段階の言語使用者」、B1/B2は「自立した言語使用者」、C1/C2は「熟達した言語使用者」とされています。Aがランクが低くてCのほうが高いのですね。たとえば、あるイタリア人が英語は日常会話がやっと、ドイツ語はペラペラだとしたら、その人の英語はB1、ドイツ語はC2レベルといったかんじです。実際、日本の高校生の英語はほとんどA1~A2のレベルにあるといわれています。CEFRの6レベルが、文科省の選んだ8つの民間試験のどのレベルに相当するかを示した対照表が以下の表です。

文科省が公表したCEFR対照表

試験名 A1 A2 B1 B2 C1 C2
英検1級            
英検準1級            
英検2級            
英検準2級            
英検3級            
TEAP            
TEAP CBT            
TOEIC            
TOEFL iBT            
IELTS            
GTEC Core            
GTEC Basic            
GTEC Advanced            
GTEC CBT            
ケンブリッジ英検 Key            
ケンブリッジ英検 Preliminary            
ケンブリッジ英検 First            
ケンブリッジ英検 Advanced            
ケンブリッジ英検 Proficiency            

受験生の立場からみた民間試験と『英語成績提供システム』

国立大学を志望する学生は、文科省が選定した8種類の民間試験の中からどれかを選んで、高校3年生の4月から12月の間に最大2回まで受検します。試験を受ける前に「この試験の成績を大学に提出するんだ」と決めて届け出る必要があるため、何度も受検してみて、その結果が出てから成績のよかった試験を選ぶなんてことはできません(高2以前の成績も原則つかえません)。受験生が受けた民間試験の結果は、『大学入試英語成績提供システム』という仕組みで各大学へ提供されることになります。そのため受験生一人ひとりに共通IDが発行されるようです。もちろん、民間試験を不要とする国立大学だけを受ける学生には関係ありませんが、共通テストの出来次第では出願する大学が変わる大勢の人にとっては、民間試験はとりあえず受けることになると思います。

国立大学志望者は3つも英語の試験を受ける!

国立大を志望する学生は、東大や京大などの難関大学をのぞいては、少なくても2つのテストは課されることになりそうです。2つのテストとは、現在のセンター試験にあたる「共通テスト」と、そして英検などの民間試験です。さらに大学の個別学力検査(いわゆる2次試験)まで含めると多くの受験生が3つの英語の試験を受けることになります。受験生にどの試験を課すかは最終的に大学が決めるので、その動きに今後も注目です。

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